最近立て続けにイマイチな本にあたってしまい、がっかり。面白い本よりも、ダメな本こそ力いっぱい書いておきたい気分になってしまう、意地悪な私です。
■島田荘司『写楽 閉じた国の幻』
写楽の正体をおもしろい視点で描いていて、史料の検討もちゃんとしていたようだし、へんに小説の体裁にしないでそのまま「自分はこう思う」って研究本にすればよかったのに、としか思えなかったガッカリ本。ミステリって帯にあったけど、どこがどうミステリだったのかいまだにわかりません。
あとがきに作者自ら、「ページが足りなくていろんなエピソードを削ったからストーリーが完結してないんだよ、そこを読者が不満に思うのはオレわかってんだよ、オレも不満なんだよ」とグダグダと言い訳が書いてあるのが、また腹立たしい。上下巻の分厚い本で、しかも文庫化。推敲のタイミングはあっただろうに、ページが足りないってどういう了見?
必要以上に自虐的で後ろ向きで、まったく応援したい気持ちにならない主人公と、美貌美貌と連呼されるだけであらゆるセリフが非現実的かつ説明的なためにまったく人間味を感じないうすっぺらいキャラクター付けの女教授。過度にヒステリックな妻。ストーリー上全然そんな必要はないのに回転ドアにはさまれて圧死する息子と、だらだら続くそれに関するつまらないゴタゴタ。
1) 回転ドア事故の責任問題
2) ダメ夫の家庭内での苦悩
3) 史料をたどっての写楽さがし(現代)
4) 蔦重と絵師(江戸)
それぞれで1冊書けそうな4つの話が詰め込まれてて、結局1と2なんか導入だけで、まったく話の進展がわからないまま。3だけ、あるいは4だけきちんと書いてくれればよかったんじゃないの?と思います。なんか「研究者が思いつきで論文を小説形式にしてみたら、やっぱりまとまりませんでしたー!テヘヘ」ってことならまだ許せるけど、島田荘司って直木賞かなんかとってる人だよね?私は今回初めて読んだんだけど、多分もうこの人の本は読まないと思います。「エレヴェーター」とか「メイル」とか、カタカナの表記が気持ち悪いのもマイナスポイント。
写楽の正体さがしのところは楽しめるだけに、残念な1冊。読んで損したとは思わないので、ほんとに残念な感じ。
■佐藤賢一『女信長』
ちょっと前に買って積んであった本。こないだドラマ化されてて視聴率がダメダメだった、という記事を読んでそれなら読んでみようではないか、とだらだらゆっくり読む私にしてはめずらしく、1日で読み切りました。この人も直木賞作家。これまで未読でこの人の本を読むのは今回が初めてというのも、上と一緒。デジャヴを感じます。
読んですぐの感想は、「この作者は70くらいのおじいさんなのか?」だったんだけど、ウィキペディア先生によると私のひとつ年下らしい。だったらこの人は童貞か、AVや風俗でしか女性と接したことがない人に違いない。いや、ほんとのところは知らないけど。そのくらい、女性の描き方が偏ってて失笑もの。必要以上にしつこく出てくる性描写は、気持ちの揺れとかまったくなし、艶っぽさのかけらもないシロモノ。読者サービスにすらなっておらず、なんの必然性があってのことなのか、まったく解せません。
ストーリーのほうも、もっと「おお、なるほど!」って解釈があるのかと思いきや、信長がやった奇抜なことはすべて「女だったから」で片付けられていて、ぽかーんとなります。「男には思いつかない。だが、女である信長にはわかった」がすべての結論。本能寺~エンディングも想定どおりで驚きゼロ。つまらんかった。
上のと違って、読んで損した。
今は三浦しをんを読み始めてます。はずれなし。『まほろ』の続編を激しく希望。
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蔵出しマロさん写真: マロさん2才、見つめあうふたり。